講義情報
講義名: T6-生命科学
教員: 本間 篤
単位: 2
学部:
カテゴリ:
開講情報
キャンパス:
開講時期:秋学期
開講学年:
昼夜区分:
曜日・時限:曜 0時限
授業のテーマと目標

通信課程の学生のあなた。
生命科学という科目名を見て、
「理系は難しそう」
と思っていませんか。

確かに、生命科学は理系科目の一つです。
ただ、本科目では数学などの難しい公式は必要としません。
生命がどのように誕生し、進化したか。
そして、現在どのように存在しているのか。
そのストーリー、そのしくみを学ぶ科目です。

少しでもよいので、「生命」という言葉に関心を抱き、興味を持ち、知って良かった、そう思えるテキスト構成にしています。

ところで。

生命とは何でしょうか。

本科目は、他の大学で言えば生物学というタイトルになるかも知れません。

しかし、生命と生物、この2つの言葉の意味は、やや違います。

生物とは、細胞という最小構成単位からなる集合体のこと。
私たち、生きている人は生物。
周囲の動物や植物も生物。
さらには、スーパーで売っている魚、肉、これも生物。

しかし、生命とは、その生物がさまざまな活動をしている現象を指します。
私たちの体内で、さまざまな物質が生み出されること。
またさまざまな物質が利用されること。

過去、現在、未来を生きる生物の活動、それが生命だといえます。

生命は、38億年前に誕生しました。

私たちは、38億年前に誕生したたった一つの生命体をスタートに、果てしない数の生命体が生死を繰り返し、途方もないストーリーを経ながら、現在にたどりついているのです。

そして、私たちの体は、まさに38億年の歴史の産物なのです。

 生命とは歴史であり、つながり。

テキスト履修科目である生命科学は、単に生物学の一般知識をつめこむものではありません。

本科目では、どのようにして生命が誕生したのか、またどのように生命の基本単位である細胞が活動し、そこにはどのような物質があり、どう”協奏”しているのかを、自ら主体的に、能動的に学んでほしいと思っています。

「なぜ?」「どうして?」そういう疑問を持つことの好きな人。

自分や他の多くの生き物、生きる命、すなわち生命に興味のある人。


そういう人に。是非この科目を履修してほしいと考えます。

この授業の目標は

  • 生命はいつ、どうして地球上に誕生できたのか
  • 生命はなぜ多様に進化したのか
  • 38億年の歴史の結果、私たちのからだを構成する細胞がどう構築されたのか

など、「生命の歴史を見つめ、今ある生命を細胞レベルで正しく理解する」ことです。

ところで、
「こどもの事、モチベーションの事を学ぶのに、生命なんて関係ない」
と思っているあなた。

実は、生命の中には、リアルな社会を見つめ、考える上での多くのヒントがあります。

例をあげましょう。

現代社会では

「弱肉強食」

つまり
経済社会では強いものだけが生き残る
というテーゼが正しいと考えられてきました。

競争社会に適応できない会社や組織は淘汰され、強い者のみが勝ち残るべきだと。

今も強くそう考える人もきっと多いはずです。

しかし、現代社会に生きる私たちは、どうもこの考え方では多くの人を幸せにできない、ということにも気付き始めています。

「弱肉強食」、一見すると生物学から誕生したように思えるこのテーゼは、生命を正しく知り、生命から学んできた人であれば、誤っていることに簡単に気づきます。

生命は、どのような環境においても、「強いものだけが生き残る」ようなことはない。

必ず、弱いものも生き残る。


なぜならば、万が一環境変化が起きたとき、多様な生命があれば、そのうちのどれかが生き残り、生命を絶やすことなく済むからです。

強いか弱いかという杓子は、その時の環境によって変わる。

すなわち、環境は変化するのだから、常に多様な個体を生かしておくことが、生命にとって大切なことであり、そう考えるならば、私たちの生きる現代社会も、強いか弱いかでなく、多様な会社や組織が存在することが何より大切で、人々が幸せに生活できると気付けるのです。
 
長くなりましたが、あなたには生命科学を学び、生命からこうした現代社会に生きる上で必要となるたくさんのヒントを獲得して欲しいと願っています。


授業の内容と計画

テキストは以下のように構成されています。繰り返し読み、必要であれば各自参考書、ウェブサイト等を参考して、興味、関心を深めてください。


第1章 生命の誕生と進化を探る

1. 生命の起源と論争
2. 生命の誕生、そして共生へ 
3. 地質時代から人類の登場へ
4. 進化のしくみと進化説  


第2章 細胞から生命を捉える

1. 細胞は生命の営みの工場である
2. 原核生物から38億年前の生命のようすがうかがえる
3. 細胞は自分の力で自分を増やす細胞があつまって個体が形成される
4. 細胞にも寿命と死がある


第3章 健康を生命科学で読み解く

1. 健康を脅かすもの~ストレス~
2. 私たちの健康を守る3つの器官
3. 3つの器官が連携してストレスに立ち向かう
4. 過度なストレスはストレス病を招く


第4章 病気を生命科学で読み解く

1. 神経細胞とうつ病
2. 膵臓の細胞と糖尿病
3. 免疫細胞とアトピー性皮膚炎
4. 免疫細胞とエイズ


第5章 染色体からわかること

1. 染色体からダウン症を理解する
2. 染色体から老化がみえる

なお、中間試験は1、2章を、また単位修得試験は3~5章を範囲とします。

また、試験直前1週間前程度を目安に、試験対策用の練習問題をまNaviにアップする予定です。テキストと並行してこちらも活用しましょう。


成績評価方法と基準
中間試験で100点、単位修得試験で100点とし、両者の合計点をもとに成績を決定します。

場合によっては課題を出すこともあります。
また、中間試験、単位修得試験で共に60%以上の正答率をとることが単位取得の条件です。
学生へのメッセージ

テキストには、健康のこと、身近な病気のこと、人間の誕生や老化、死に関することを取り上げました。

生命に関する知を基に、自分自身で

  • 生命とは何か
  • 人間とは何か
  • 私たちの生きる社会はどうあるべきか

について考えてもらうこと、それが授業の目的です。

社会人のみなさんの中には、高校時代に学習した理系科目(生物など)の記憶が乏しい方もいるかも知れません。

しかし、「学びたい」「知りたい」という気持ちさえあれば、必ず単位を修得できるはずです。
「学びたい」「知りたい」と感じたその瞬間に、どんどん勉強してください。

また、インターネットは顔の見えない世界です。

掲示板等での言葉のやりとりが、思わぬ誤解を生じたり、他者を不必要に傷づけたりすることもあるかもしれません。

直接顔を合わせていれば生じない誤解も、インターネット等では起きやすいことでしょう。

昨今は、インターネット上で過剰に心無い言葉が飛び交ってしまうことも多々あるようです。

誰もが、インターネットの利点だけでなく、マイナス点も考慮し、相手の顔、気持ちを想像して、気持ちよく掲示板を使えるよう、学生のみなさんの思いやり、温かい配慮の気持ちを持ちながら、CoLSのシステムを上手に利用してください。

言葉を書き連ねるのは、お互い生きた命、生命である私たち人間です。
温かい気持ちを忘れず、共に学びあっていきましょう。 


教科書・参考書

  • 生命の設計図 その仕組みと正しい読み方 / ヤン・ウィトコウスキー、ローリー・グッドマン、デイビッド・スチュワート / ニュートンプレス / 参考書 
  • 「カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学」:講談社ブルーバックス;参考書
  • 「カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第2巻 分子遺伝学」:講談社ブルーバックス;参考書 
  • 「カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第3巻 分子生物学」:講談社ブルーバックス;参考書
  • 「生物と無生物のあいだ」:福岡伸一:講談社現代新書;参考書
  • 「アポトーシスとは何か―死からはじまる生の科学」:田沼靖一:講談社現代新書;参考書
  • 「生命観を問いなおす―エコロジーから脳死まで」:森岡正博:筑摩書房;参考書 
  • 「弱くある自由へ―自己決定・介護・生死の技術」:立岩真也:青土社;参考
  • 「ALS  不動の身体と息する機械」」:立岩真也:医学書院;参考書 
  • 「生命倫理とは何か」:市野川容孝:平凡社;参考書
その他