通信課程を履修するみなさん。
シラバスをみて、生命科学を履修すべきか迷っているところでしょうか。
理系科目ではありますが、数学や元素記号といった難しい知識は全く必要でありません。
以下の内容を読み、履修するかどうか検討してください。
質問です。
生命とは何でしょうか。
あなたは生命ですか、それとも生物ですか?
生命科学というと、生物学と同じように思えるかもしれません。
しかし、生命と生物、この2つの言葉の意味には、やや違いがあります。
生物とは、細胞という最小構成単位からなる集合体のこと。
よって、この条件を満たしたものが生物です。
スーパーで売っている魚、肉、これも生物といえる。
しかし、生命とは、その生物がさまざまな活動をしていること。
食べる、消化する、個体を生長させる、子孫を作る 等々
生物だけでなく、生物が活動している状態、すなわち
「生きていること」
が生命だといえます。
生命は、38億年前に誕生しました。
私たちは、38億年前に誕生したたった一つの生命体をスタートに、果てしない数の生命体が生死を繰り返しながら、ようやく今たどりついたのです。
そこには、果てしない数の困難な歴史があり、私たちの体は、まさにその歴史の産物なのです。
生命とは歴史であり、つながりである。
テキスト履修科目である生命科学は、単に生物学の一般知識をつめこむのでなく、どのようにして生命が誕生したのか、またどのように生命の基本単位である細胞が活動し、そこにはどのような物質があり、どう”協奏”しているのかを学んでほしいと考え、テキストをつくりました。
「なぜ?」「どうして?」そういう疑問を持つことの好きな人。
自分や他の多くの生き物、生きる命、すなわち生命に興味のある人。
そういう人に。是非この科目を履修してほしいと考えます。
この授業の目標は
- 生命はいつ、どうして地球上に誕生できたのか
- 生命はなぜ多様に進化したのか
- 38億年の歴史の結果、私たちのからだを構成する細胞がどう構築されたのか
など、「生命の歴史を見つめ、今ある生命を細胞レベルで正しく理解する」ことです。
ところで、
「こどもの事、モチベーションの事を学ぶのに、生命なんて関係ない」
と思っているあなた。
実は、生命の中には、リアルな社会を見つめ、考える上での多くのヒントがあります。
例をあげましょう。
現代社会では
「弱肉強食」
つまり
経済社会では強いものだけが生き残る
というテーゼが正しいと考えられてきました。
競争社会に適応できない会社や組織は淘汰され、強い者のみが勝ち残るべきだと。
今も強くそう考える人もきっと多いはずです。
しかし、現代社会に生きる私たちは、どうもこの考え方では多くの人を幸せにできない、ということにも気付き始めています。
「弱肉強食」、一見すると生物学から誕生したように思えるこのテーゼは、生命を正しく知り、生命から学んできた人であれば、誤っていることに簡単に気づきます。
生命は、どのような環境においても、「強いものだけが生き残る」ようなことはない。
必ず、弱いものも生き残る。
なぜならば、万が一環境変化が起きたとき、多様な生命があれば、そのうちのどれかが生き残り、生命を絶やすことなく済むからです。
強いか弱いかという杓子は、その時の環境によって変わる。
すなわち、環境は変化するのだから、常に多様な個体を生かしておくことが、生命にとって大切なことであり、そう考えるならば、私たちの生きる現代社会も、強いか弱いかでなく、多様な会社や組織が存在することが何より大切で、人々が幸せに生活できると気付けるのです。
生命科学を学び、生命からこうした現代社会に生きる上で必要となるたくさんのヒントを獲得してください。
また、21世紀に輝く科学技術は生命に関するものが中心となるでしょう。
2012年、iPS細胞の研究で京都大学の山中教授がノーベル賞をとったように、今後生命を利用した新たな科学技術がたくさん誕生します。
本授業で学んだ知識は、あなたが今後、これらの科学技術を利用する時、その原理の理解に役立つはずです。