言語と文化
私たちの多くは、あたりまえのように日本語を使用し、日本文化にもとづいたふるまいをよしとしているが、こうした共通の言語や文化のあり方に目を向けていく。かつて近代国民国家は、共通の言語や文化をつくりだすことによって、国家としての基盤を築いてきたが、今日、多くの国々では、その言語と文化の共通性が揺らいでいる。国語や公用語以外の言語を母語とする人々や、普遍的とみなされてきた文化とは異なる文化を身につけた人々と、ともに暮らす機会が増えてきたからである。欧米諸国はもとより日本でも、多様な言語や文化とどのような折り合いをつけていくのかが、問われている。そこで、この講義では、人をつなぐものであるとともに人を分かつものでもある、言語や文化の役割について考察していきたい。
授業の具体的目標
この授業は修行的な側面をあわせもつため、受講に際しては自己鍛錬ともいうべき相当の意識向上を要する。まず、テキストの講読と副教材による学習という厳格な二つの目標に沿って進めていく。第一の目標であるテキストの講読では、黒田龍之助『はじめての言語学』の講読を通して、私たちにとっての言語と文化の意味について理論的な考察を深めていく。この作業においては、各自に逐次レポートの提出を課す。第二の目標である副教材による学習では、授業時に配布するプリント教材や授業時に視聴するビデオ教材を通して、多様な言語と文化のありようについて学んでいく。