講義情報
講義名: 質的分析法
教員: 松永 博子
単位: 2
学部:
カテゴリ:
開講情報
キャンパス:
開講時期:春学期
開講学年:
昼夜区分:
曜日・時限:木曜 5時限
科目番号(科目ナンバリング)
XEME301A
授業のテーマと目標
テーマ
心理学,社会学,教育学等の分野では、実験やアンケート調査による量的方法だけではなく、研究者がフィールド(現場)に身をおいて実際に体験しながら調べていく質的方法が利用されている。そこでは単一の分析法だけが用いられるのではなく、参与観察しながらインタビューしたり、映像や本、雑誌や新聞の記事、ブログやSNSの投稿等を利用するなど、様々な資料や分析法を駆使して研究対象を捉えていく。本授業は、数理・データサイエンスに関する科目である。
目標
本授業では、現在話題になっている社会現象を題材に、まずはどのように調べて、データを整理すればいいのかについて、討論しながら具体的に考える。その上で、関連研究を紹介し、そこで用いられた分析法を説明する。具体的には、自分たちで身の回りの実践を調べることで、分析法やデータ整理の仕方を体験的に身につける。統計の基礎知識を既に習得済みの3年次以上の学生を対象とし、卒業研究で扱うテーマの視野を広げる役割となることを目指す。それにより、個人を見つめる力及び他者と関わる力をつける。具体的には以下のとおりである。
・現状の社会課題の把握ができるようになる。
・グループワークを通した課題の明確化を試みる。
・客観的視点ではない当事者視点の重要性を改めて学ぶ。
・当事者による語りからの概念生成を体得する。
・質的分析法を活かした今後の仕事(業務)への展開への一歩を習得する。
卒業・学位授与方針(ディプロマポリシー(DP))との関係
DP-M1-個人をみつめる力を身につけること
DP-M2-他者と関わる力を身につけること

身につけるべき学士力
C-5:問題を発見し、必要な情報を収集・分析・整理し、解決できる。
D-9:情報や知識を多角的・論理的に分析し、表現できる。
E-15:他者に目標や方向性を示し、その実現のために行動できる。
L-46:客観的な視点で人間行動を理解し分析できる。
L-47:モチベーションやリーダーシップに関する専門的知識に基づいて行動できる。
M-48:他者を肯定的に理解することができる。
M-49:対人コミュニケーション理論にもとづいたコミュニケーションができる。
M-50:自分の関わる企業・組織や市場の情報を収集することができる。
N-55:さまざまな実践経験をもとに地域の人びとと連携できる。
授業の内容と計画
第1回
質的分析法とは何か
第2回
質的研究の手続きと倫理
第3回
フィールドワークとワーク研究の説明
第4回
質的論文とワーク研究(研究テーマディスカッション)
第5回
カテゴリー化とフィールドノーツ、フィールドノーツ体験
第6回
SCATとワーク研究(インタビューガイド)
第7回
言語以外の質的分析法とテキストマイニング、テキストマイニング体験
第8回
混合研究法:質的研究と量的研究の組み合わせ
第9回
ワーク研究:データの整理とまとめ方(インタビューガイドと逐語録)
第10回
ワーク研究:SCAT:ワークシートからStep2まで
第11回
ワーク研究:SCAT:Step3から完成まで
第12回
ワーク研究:KJ法:元ラベル作成からラベル広げまで
第13回
ワーク研究:KJ法:統合まで
第14回
ワーク研究:KJ法:分析結果の示し方(ストーリーライン、概念図、統合のプロセス)

定期試験:実施しない

※授業の進行や社会情勢によっては、内容を変更する場合がありうる。
事前学習・事後学習
事前学習:2時間
事前学習として、各回テーマに沿った研究論文をCoLSを通じて配布するので、課題として論文を読んでもらい、授業の初めにその研究方法について30分程度ディスカッションする。
事後学習:2時間30分
事後学習としては、授業で取り上げる様々な質的分析法について、その概要をノートにまとめ、どのような場合に有効な分析法かについて理解を深める。
アクティブラーニングの実施
本講座では、グルーワークによるテーマを設定した「ワーク研究」で、設定した内容に従いフィールドに赴き、実際のインタビュー調査の流れを体験する。インタビューガイドの作成までの経緯については、グループごとにプレゼンテーションを行った後にその発表に対するディベート、ディスカッションを行う。質的分析方法においても、最低2つ以上の分析方法について体得してもらい、自身の研究に役立てていく礎を作る。
ICTの活用
授業内では、コンピューターやプロジェクターを使用して講義を行うだけでなく、グループで考えをまとめたり、協働してグループワークやディベート、プレゼンテーションなど発表資料の作成、発表するためにICTを用いる。
授業では、各自の携帯やipad、ノートPCの機能を活用して情報収集、逐語録の起こし方等についても実際に体験してもらう。
課題についてはマイクロソフトオフィスのwordやパワーポイントといったプレゼンテーション機能を活用し、概念図等を作成してもらうこととしている。
実務経験を生かした授業の実施
東京都健康長寿医療センター研究所において、住民調査やインタビュー調査を行っており、質的分析を用いた学会発表のスライドや論文を学生と共有し、実務を生かした授業(第2回、第8回、第9回)を行う予定である。
成績評価方法と基準
〈成績評価の基準〉
S:到達目標を完全に達成している
A:到達目標をほぼ完全に達成している
B:到達目標を十分に達成している
C:到達目標を達成している
E・F:到達目標を達成していない
〈評価方法〉
基準に達しているか否かは以下の方法で判断する。
授業への参加およびその態度、授業内課題への取り組み状況により総合的に評価する。
1.課題レポートの評価(40%)2.授業への参加・態度、授業内課題(20%)3.授業内で実施する分析(40%)として総合的に判断する。
*3の単位認定分析はそれぞれのテーマに沿った分析を試み、その分析結果の提出をもって単位の認定とする。
〈課題に対するフィードバック〉
提出すべき課題の内容について授業内に解説する。授業内では個別に分析について指導、相談を行いつつ課題の提出に向けたサポートを行う。
試験・課題に対するフィードバック方法
・提出されたコメントやレポートにコメントをつけて返却する。
・後半のSCAT、KJ法においては、常時、個別に分析に関する指導や助言等を行い、分析の終結を支援する。
学生へのメッセージ
質的研究に興味を持っている人、混合研究をやってみたい人、一緒に質的研究を体験してみませんか。講義だけでなく、実際に質的分析を試みて、自身の卒業論文等に活かしてもらいたいと考えています。
出席をとっている間の入室は遅刻としませんが、それ以降の入室については遅刻とみなします。遅刻3回で欠席1回とします。
ただ、遅刻となってしまっても是非授業に参加してください。待っています。
オフィスアワー
CoLSやメール等において常に質問を受け付けています。
また、授業前や授業後も指定の教室の前にしばらくおりますので、授業の前後にお声掛け下さい。
教科書・参考書
教科書:指定の教科書はありません。必要に応じて資料を配布します。
参考書: 能智正博(2011)「質的研究法」東京大学出版会.その他、適宜授業内で紹介します。
その他
配布資料については、各自PCやタブレット等に本授業のファイルホルダーを作成し、資料を紛失しないように格納しておいてください。