講義情報
講義名: 心理療法上級A
教員: 須田 誠
単位: 2
学部:
カテゴリ:
開講情報
キャンパス:
開講時期:春学期
開講学年:
昼夜区分:
曜日・時限:火曜 3時限
科目番号(科目ナンバリング)
XBJE303A
授業のテーマと目標
授業のテーマ:
カウンセリングや心理療法も含めた「心理臨床」とは、どのような営みであろうか。本授業では、様々な心理療法に通底している支持や信頼関係、そして基本的な技法などを紹介しつつ、心理療法におけるアセスメント・治療契約・治療構造・セッションの進行・終結について解説をする。また、クライエントの問題・課題に気づかなければ、そもそも心理療法はできない。そこで、人間の抱える様々な苦しみや悩みを紹介し、それにどのように介入するのかを解説する。その際に必要な「倫理」についても重視する。最終的には、「心理的支援は容易なことではない。それではどうすればよいのか」ということを考察をする。

授業の目標:
1.代表的なカウンセリング・心理療法の概要を理解する。
2.様々なカウンセリング・心理療法に共通する考え方・技法を理解する。
3.心理療法の開始から終結までの流れを理解する。
4.アセスメントや倫理的配慮などを含めた心理臨床について理解する。
卒業・学位授与方針(ディプロマポリシー(DP))との関係
DP-CP1 専門的知識と技術を身につけること。
DP-CP3 資格に適う力を身につけること。
DP-P2 心理学に関する専門的知識と技術を身につけること。
DP-P3 心理職としての専門的知識と技術を身につけること。
身につけるべき学士力
E-11:自分の意見をわかりやすく伝えることができる。
G-19:自らを律して行動できる。
C-6:獲得した知識・技能を総合的に活用し、課題に適用し、解決できる。
H-24:心理学的な枠組みで人間の心の働きを理解できる。
H-22:子どもの多様な発達プロセスを科学的にとらえることができる。
I-26:他者の立場に立ち、共感的に理解し関わることができる。
I-27:全体を俯瞰しながら、他者の置かれた状況を的確に判断し、適切な援助ができる。
授業の内容と計画
*全回出席、無遅刻、無早退を基本とする。
*「受講上の注意」は授業開始前にCoLS上で提示するので必ずしっかり読んでおくこと。
*第1回は「ガイダンス」ではなく本格的な「講義」を行う。

第1回
1.心に寄り添うとはどのようなことか?
2.不登校の事例
*第1回と第2回は連続した内容であるため、どちらかを欠席すると2回分の内容が全く分からなくなる。

第2回
1.心に寄り添うとはどのようなことか?
2.いじめ・虐待の事例
*第1回と第2回は連続した内容であるため、どちらかを欠席すると2回分の内容が全く分からなくなる。

第3回
1.心理臨床とは何か?
2.心理療法の第一歩:アセスメント
3.クライエント・センタード・アプローチ
4.力動派・行動主義・認知主義・コミュニティアプローチの概要
5.被害者支援の事例

第4回
1.力動派―心を分析できるのか?―
2.司法領域の心理臨床の事例検討

第5回
1.コンサルテーション
2.ひきこもりの事例

第6回
1.ケース・フォーミュレーション
2.治療関係の把握

第7回
1.事例を通したケース・フォーミュレーションの演習

第8回
1.病んだ家族/機能不全家族の事例検討

第9回
1.家族に介入するということ
2.家族療法の基礎
3.家族への介入の事例検討

第10回
1.統合的アプローチと表現療法
2.軽度知的障害の事例検討

第11回
1.教育領域の心理臨床
2.教育カウンセリング:非行の事例検討

第12回
1.産業領域の心理臨床
2.ハラスメントの事例検討
*第12回と第13回は連続した内容であるため、どちらかを欠席すると2回分の内容が全く分からなくなる。

第13回
1.司法領域の心理臨床
2.性暴力の事例
*第12回と第13回は連続した内容であるため、どちらかを欠席すると2回分の内容が全く分からなくなる。

第14回
1.心理臨床における倫理
2.他者の心を知ってよいのか?そもそも心を知ることは可能か?
3.人と人との触れ合い
4.心理臨床家の職責
5.最終テスト(最終課題)

*履修者数、学生の理解深度等に応じて授業方法や内容を変更する場合がある。
事前学習・事後学習
事前学習:前提科目である「心理療法基礎」の教科書・参考書や配布資料などを用いて復習する。本授業の参考書や配布資料などをしっかり読み解く。(2時間)

事後学習:本授業の各回の内容を振り返り、不明な点は必ず調べる。さらに参考書などで様々な事例にあたりながら考察を深める。(2.5時間)
アクティブラーニングの実施
グループワークで意見交換や討議を行う。
ICTの活用
・学習対象への思考や理解を深めるために、適宜 ICT を用いて授業を行う。
・コンピュータやプロジェクターなどを活用して、資料などの提示や共有を行う。
・授業では、学生がコンピュータやインターネットなどを活用して、情報を収集したり選択したりする。
・学生はコンピュータでレポートなどを作成し、CoLSを通して提出などを行う。
実務経験を生かした授業の実施
実務経験:臨床心理学における下記の実務経験を授業に生かす。


警察本部での非行・犯罪少年に関する資質鑑別専門員、精神科クリニックでの心理士、高校での非常勤講師、地域保健所での不登校・ひきこもり相談員、スクールカウンセラー、大学の学生相談室の相談員、災害の被災地などでのコミュニティ支援


これらから得られた知見を授業に生かして授業を実施する。全回において実務経験の知見を活用する。
SDGsに係る科目
目標4.すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。

4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
成績評価方法と基準
<評価基準>
S 到達目標を完全に達成している。
A 到達目標をほぼ完全に達成している。
B 到達目標を十分に達成している。
C 到達目標を達成している。
E 到達目標を達成していない。

<評価方法>
*全回出席・無遅刻・無欠席が原則である。
*20分以上の遅刻は欠席とする。
*20分未満の遅刻3回で欠席1回とする。
*居眠りや無断のスマートフォンの操作などは最終的な成績評価で減点する。
*最終テストを受験しない場合(ないし最終課題を提出しない場合)は単位を付与しない。
*下記の方法で成績を判断する。

(1)受講態度・授業への参加状況(CoLSの進捗状況などの予習復習、討議や質問、講義を聴く姿勢・マナー):30%
(2)小テスト(毎回のコメントの質と量等を含む):20%
(3)最終テスト:50%

*予習については、CoLSに提示した授業資料の事前のダウンロード状況などで判断し、点数化する。
試験・課題に対するフィードバック方法
レポートにおける全体の傾向について講評をする。
学生へのメッセージ
・この授業は「心理臨床全般について発展的に考察・体験する」というものであり、「カウンセリング・心理療法を修得する」というものではありません。心理療法を職業として行っている者であっても、その修得には何年ものトレーニングを必要とし、また、生涯にわたる研鑽が必要であることを知っておいてください。

・この授業では心理療法の特定のアプローチ法(家族療法や認知行動療法など)を修得することを目的としていません。心理臨床における基礎的な知識とスキルを使い、「人が人を支援すること」について、多角的な視点から考察することを目的としています。

・授業内で事例を取り上げる場合がありますが、情報を適切に取り扱い、秘密を守ってください。

・授業内で心理的・身体的・性的に残酷な描写(文字情報や映像情報など)があることをご承知おきください。

・履修者数、学生の理解深度等に応じて授業方法や内容を変更する場合があります。
オフィスアワー
講義開始時に各教員から提示します。
教科書・参考書
教科書は使用しない。

参考書:
・心理療法のケースをどう読み解くか? パーソナリティ障害を軸にした事例検討(林直樹・野村俊明・青木紀久代編、2020年、福村出版)

・マイクロカウンセリング “学ぶ-使う-教える”技法の統合:その理論と実際(アレン・アイビィ著、福原真知子・椙山喜代子・國分久子・楡木満生訳、1985年、川島書店)