講義情報
講義名: 哲学②
教員: 栗原 仁
単位: 2
学部:
カテゴリ:
開講情報
キャンパス:
開講時期:春学期
開講学年:
昼夜区分:
曜日・時限:金曜 2時限
科目番号(科目ナンバリング)
XABA107A
授業のテーマと目標
【テーマ】
哲学思想的観点からフランスの現代作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』を読む。
そのテクストに対する多様な読み方の可能性を受講者と共に探りたいと思う。
とりわけ作品内に示された「子ども」と「大人」という対立項を軸にしつつ、最終的には「キツネの哲学」と呼ぶべき「教え」について考えてみたい。

【目標】
本授業では
1)自ら考え
2)それを他者に向けて表現・発信し
3)同時に他者の考えにも耳を傾ける
ことができるようになるのが目標である。
この3つの姿勢を身につけるための努力が各自に求められる。
知識としての哲学思想の意義を認めながらも、自ら考える力を得て、そうした自らの意見を他の授業参加者と共有しつつ検討吟味していく姿勢をつねに意識すること。
卒業・学位授与方針(ディプロマポリシー(DP))との関係
DP-CP2:研究する力を身につけること。
DP-CP3:資格に適う力を身につけること。
DP-P1:教養的知識・技能を身につけること。
DP-P4:人間性や心の豊かさを培うスキルを身につけること。
DP-C1:教養的知識・技能を身につけること。
DP-C2:教育・保育・福祉等に関する職能を身につけること。
DP-M1:個人をみつめる力を身につけること。
DP-M2:他者と関わる力を身につけること。
身につけるべき学士力
A-1:文化・社会と自然に関する知識を理解できる。
A-2:意見や立場の違いを理解し、受け入れることができる。
B-3:卒業後も自律・自立して学習できる。
B-4:目標を設定し、自ら進んで取り組むことができる。
C-5:問題を発見し、必要な情報を収集・分析・整理し、解決できる。
D-9:情報や知識を多角的・論理的に分析し、表現できる。
E-11:自分の意見をわかりやすく伝えることができる。
E-12:相手の意見を丁寧に聞くことができる。
I-28:他者の立場を理解し、尊重しつつ、自分の意見も主張できる。
L-44:自分自身を受け入れることができる。
M-48:他者を肯定的に理解することができる。
授業の内容と計画
【授業内容】
基本的に授業内容は大きく分けて以下の4つの部分から構成される予定である。

1)テクストの具体的指定箇所への検討:学生
毎回の検討範囲を指定するので、必ず履修者はその箇所を丹念に熟読してくることを前提としたい。
各授業に出席する前段階において、履修者それぞれに各範囲ごとの感想・疑問・注目点等をCoLS上の設問に対するアンケート形式でコメント(事前感想コメント)してもらい、その内容を氏名は伏せた形で公開して全体での意見共有も進めておきたい。
ある程度は担当教員側の設問で議論の焦点や注目点が示されるとはいえ、最初から何らかの観点や考え方を提示することは極力避けて、受講生側の自由な発想を重視したいと思う。

2)グループ単位でのディスカッション:学生
いくつか指定された論点について、授業冒頭でグループに分かれて議論を重ね、その結果を口頭で述べてもらう。

3)講義形式によるテクストへの検討:教員
『星の王子さま』に対するさまざまな読み方の実例を担当教員の考えも交えつつ、講義形式によって順次紹介していきたい。

4)以上さまざまな見解を踏まえた上での全体討議:教員と学生
必ず授業中には、できるだけ多くの出席学生に発言してもらう機会を設けたい。
担当教員を含めた参加者間で意見の交流を進める予定である。
また、CoLS上で共有された特色ある指摘や議論の糸口となり得る事前感想コメントに対しては、できる限り授業中に取り上げ、教員側からの考えも提示していく。
さらなる学生側からのコメントもCoLS「質問箱」等を活用して継続的に受けつけたいと思う。

【授業スケジュール】
第0回:授業ガイダンス/「見る」ことと「読む」ことの可能性
第1回:「見る」こと:絵を見て答える
第2回:「読む」こと:『星の王子さま』を読む
第3回:サン=テグジュペリの生涯とその時代
第4回:「献辞」における大人と子ども
第5回:これまでの議論の整理とコメントを読んで①(感想)
第6回:「回想と出会い」第1章〜第4章(p.11-29)
第7回:「王子さまの星とその住人」第5章〜第9章(p.30-52)
第8回:「6つの惑星とその住人」第10章〜第15章(p.52-81)
第9回:「地球とその住人」第16章〜第25章(p.81-117)
第10回:「別れと想起」第26章〜第27章(p.117-133)
第11回:「あとがき」
第12回:これまでの議論の整理とコメントを読んで②(分析)
第13回:各自の『星の王子さま』論へ向けて
第14回:キツネの哲学

【学期末】
定期試験は実施しないが、学期末に授業内容の要約ならびに各自の『星の王子さま』に対する読みの成果を提出してもらう予定である。
本授業のCoLS上では「アンケート」や「レポート」等いくつかの形式は存在するが、何らかの提出物すべてを「課題」(「タスク」)と見なして成績評価の対象とする。

※初回ガイダンスに必ず出席。2回目から出席する場合には書面にて欠席理由を提出すること。
※履修者は早めにテキストを入手して、第3回目の授業までに必ず最初の一読を終えておくこと。また、指定教科書を入手することなく授業に来ることは厳禁。
※原則的にはフランス語の知識は問わない。
※授業の進行状況や社会情勢によって、順番や内容を変更する場合がある。
事前学習・事後学習
【事前学習】
テクストを読みながら、自分の感想や意見を必ず書きとめておくこと。
基本的に上述の授業スケジュールの通り検討範囲を指定するので、必ず出席者はその箇所を丹念に熟読して、CoLSに感想コメントを入力してから授業に出席することを前提としたい。
また順次公表される他の履修学生によるコメントにも目を通しておくこと。(約2時間30分)

【事後学習】
自分の感想や意見のみならず、授業中やCoLSで得た他の学生によるコメントもノートにまとめておくこと。(約2時間)

※履修者は第3回目の授業以前に必ずテクスト最後までの一読を終えておくこと。
※春学期開講と同時にCoLS「マナビ」冒頭に掲載される「授業の決まり」も必ず参照すること。
アクティブラーニングの実施
毎回、自らの感想や意見を述べ、他の出席学生と意見共有を行うディスカッションやディベートが採用される。
希望者がいる場合にはプレゼンテーションも取り入れたい。
ICTの活用
CoLSのアンケート機能を活用して各自の感想・意見を匿名で公開共有。
授業前後にCoLSを通して質問を受けつけ、できるだけ回答対応も行う予定。
自分の考えをCoLSへ入力し、文章にまとめて課題レポート(コメント)を作成、そして提出。
成績評価方法と基準
【成績評価基準】
本授業で設けた目標に到達し、身につけるべき学士力を修得したと見なされた場合に単位を認定する。

S:到達目標を完全に達成している。
A:到達目標をほぼ完全に達成している。
B:到達目標を十分に達成している
C:到達目標を達成している。
E・F:到達目標を達成していない。


【評価方法】
基準に達しているか否かは以下の方法で判断する。
授業への参加状況と積極性(20%)/各回の事前感想レポート(50%)/授業要約と学期末レポート(30%)
以上の評価配分に沿って、各項目を総合して100点満点で評定を算出するが、各回の事前感想レポート(コメント)を含め、下記の出席回数を満たしてコンスタントに提出・出席していなければ単位取得はできないこととする。
とりわけ学期末レポートに関しては、その記述方法や評価基準を授業中に提示するので、それを念頭に置いて作成すること。
以上の評価配分は、授業進行に従って若干の変更を施す場合もある。

【出欠基準】
対面授業への出席のみならず、各授業回のCoLSの閲覧と事前感想コメント入力、あるいはレポート等の「タスク」提出を満たして初めて当該授業への出席と見なす。
正当な理由のない欠席(や感想コメント等の未提出)は原則的には認めないこととする。
欠席(や感想コメント等の未提出)に関しては文書によって理由を提示してもらう場合がある。
やむを得ない場合であっても、欠席は計3回までとする。
また、対面授業への遅刻(授業開始20分以内)は2回で欠席1回相当として扱う。
本授業では遅刻欠席あるいは提出物の扱いについて、非常に厳しい基準が求められている点を確認の上、履修登録をすること。

※春学期開講と同時にCoLS「マナビ」冒頭に掲載される「授業の決まり」も必ず参照すること。
試験・課題に対するフィードバック方法
CoLSへ入力提出された事前感想コメントに対するレスポンスは可能な限り授業中に口頭で行う予定。
また必要があれば文章化してCoLSで公表。
学生へのメッセージ
受講者は単に受け身の姿勢で講義に参加するだけではなく、たとえ素朴な内容であっても自分の感想や意見を持ち、積極的に授業に取り組むこと。
同時に、自分以外の出席者の感想・意見に広く耳を傾け、共に考え自らの思考を広げる場として活用してもらいたい。
上記「成績評価方法と基準」の【出欠基準】に示した通り、本授業における遅刻欠席・タスク未提出に対する扱いは厳しい方針であることを十分に意識すること。

※これまでの単位の取得・未取得を問わず、同担当教員による「哲学」への授業に出席したことのある学生は再登録や再出席は避け、できるだけ他の授業を履修することが望ましい。
オフィスアワー
授業開始前後の教室にて。
またCoLSやメールを活用して質問を受けつける。
教科書・参考書
【教科書】
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま(オリジナル版)』(内藤濯訳)、岩波書店、2000年(ISBN 9784001156768)

※近年、数多くの翻訳が出版されているが、今回は内藤濯訳のうちでもハードカバーで横書きカラーの「オリジナル版」を共通テクストに指定。

【参考書】
塚崎幹夫『星の王子さまの世界 読みくらべへの招待』、中公新書、1982年
山崎庸一郎『星の王子さまの秘密』、弥生書房、1994年(新装版)
水本弘文『「星の王子さま」の見えない世界』、大学教育出版、2002年
片木智年『星の王子さま学』、慶應義塾大学出版会、2005年
三野博司『「星の王子さま」の謎』、論創社、2005年
藤田尊潮『「星の王子さま」を読む』、八坂書房、2005年
甲田純生『「星の王子さま」を哲学する』、ミネルヴァ書房、2006年
マリーズ・ブリュモン『「星の王子さま」を学ぶ人のために』(三野博司訳)、世界思想社、2007年
三野博司『「星の王子さま」事典』、大修館書店、2010年
土田知則『「星の王子さま」再読』、小鳥遊書房、2021年 他